2023年12月13日水曜日

11日目:ピアスタッフにとっての対等とは

こんにちは!にしこです。


「私はあなたとの対等な関係を大切にします」

誰かにこのような言葉をかけられたらみなさんはどのように感じるでしょうか。そして、もしそれが、あなたがサービスの利用者で、相手がピアスタッフだったらどうでしょう。

 

実際のところピアスタッフから「私とあなたは対等だよ」と声をかけられたら、あなたは「そうかな?」とまず首を傾げるのではないでしょうか。だってピアスタッフはお給料をもらっているスタッフで、あなたは利用者なのだから、やはり対等ではありませんよね。ピアスタッフが名札をつけてあなたの入れないスタッフルームに出入りしていたり、ピアスタッフが記録であなたの電話番号を知っているのに、あなたはピアスタッフの番号を知らないとか、そういうことなどがあったら、ピアスタッフと利用者は対等ではないと感じるのは、なおのこと当然だと思います。

 


ピアスタッフの例に限らず、そもそも私たちに対等な関係性というものは存在するのでしょうか。人は一人ひとり置かれた立場が違います。経済力、健康度、対人関係など、その立場によって、強い人と弱い人、言葉を変えれば、優位な人と劣位な人が存在します。そう考えると、対等な関係性というのは現実的にはとても難しい気がしてきます。

 

優位な人や劣位な人といった、人の優劣は「できること」をどれだけ多く持っているかによって決まるのではないかと私は思います。「できること」とは身近なところでは、

  • 好きな人と一緒にいられる
  • 好きなお菓子を食べられる
  • 好きな歌を聴いたり、好きなテレビ番組を見られる
  • 好きなコレクションを手に入れられる
  • 好きな場所に行ける
  • 好きなことを学べる

などが挙げられるでしょうか。さらに視野を広げると

  • 生命の維持に必要な水や食料を手に入れられる
  • 貨幣を対価に欲しいものを手に入れられる
  • 高収入の職業に就くことができる
  • 優位な配偶者を得て、子孫を残せる
  • 成績づけや立場分けといった評価により他人の優劣を決められる
  • 正義の名のもと他人の自由や命を奪うことができる

などといったことも「できること」として世の中には現実的にありそうです。

 

こうしてみると、これら「できること」は全て、経済、情報、サービス、技術、組織、慣習、法制度などといった社会的な仕組みから生み出されるものだと気づかされます。「できること」を持っている優位な人と持っていない劣位な人の区別、つまり優劣が、社会の仕組みの中で決められていくというのは、人間の営みの特徴かもしれません。この点、他の個体との格闘能力や、餌を獲る能力など、生物的個体差により優劣が決まる野生動物とは対照的です。

 

社会の仕組みの中で優位と劣位が起きる時、人は順位づけられます。それがまた別の意味での人間特有の区別を生み出します。それは差別と偏見です。差別や偏見は「できること」の多い優位な人と「できること」の少ない劣位の人の間で生じるものだという気がします。

 

社会的立場でみたとき、人は誰しも完全に対等な関係ではありません。



とはいえ、とはいえですよ、

それでも私は、人間は「一個の人としては」対等であると信じたい。人生や魂や命の重さに違いはありません。生物的個体差で強弱が決まる野生動物と違って、私たち人間は社会的存在だからこそ、対等になれるとも思うのです。人種や性別、信仰、身体的特徴、そして社会的優劣の次元を超えられた時、それぞれが一人の存在として人は対等となれると私は思います。


だから、冒頭の「私はあなたとの対等な関係を大切にします」という言葉を、ピアスタッフとして発するとしたら、立場を超え、人としての存在の上で対等でありたいという、そんな思いを込めて目の前の人に伝えていきたいと思います。

 


いま、相川章子先生(聖学院大学)が代表を務める研究会に加えていただいて「ピアスタッフが大切にしたいこと」をみんなでまとめています。これはいわゆるピアスタッフの核となる価値(コアバリュー)です。内容を12項目にまとめ、先日12月10日の「第11回全国ピアスタッフの集い」で発表しました。実は冒頭の文句は「私たちは、あなたとの対等な関係を大切にしています」という文言で、12項目のうち一番最初の項目に位置づけられているものです。

 

つまり「ピアスタッフが大切にしたいこと」として「人として対等であること」を最初に掲げているわけです。これは、「あなたも私も人として大切な存在」という意味を込めたとても大事なメッセージです。ピアスタッフとして基本の理念になると考えています。

 

「ピアスタッフが大切にしたいこと」は以下からご覧いただけます。お時間のある時に見ていただき、みなさんからもご意見をいただけたらと思います。

 

https://sites.google.com/view/peer-values-roles

 

ではまた!


つぶやきびと:にしこ