2022年4月14日木曜日

ピアスタッフの為の小さな継続学習会(6)

 9月から学習会を始めました。私たちも試行錯誤の手探り状態でまずはお試し的な意味合いも含め、当面はクローズで実施の予定です。

しばらくこの試みをやってみた後に、参加者を募って学習会を開けたらと考えており、現在はその準備も兼ねているといった感じです。参加希望の方には大変心苦しいですがご案内が整う時期がきたら、しっぷろWEBサイトにて案内するように致しますので何卒よろしくお願い申し上げます。

第6回学習会(勉強会)を2022年2月20日(日)に行いました。この学習会は、ピアサポートワーカーとして働くことについてなどをコツコツと学ぶための学習会をまずは小さいサイズの固定メンバーではじめてみよう、ということではじめました。内容について知りたい方もいらっしゃるかもと思い、少し共有させていただきます。


この日は、

  • 参加者同士の自己紹介

  • 学習内容

  • 今日感じたことの分かちあい & 今後の予定確認など…をしました 


 
学習会資料

ImROCの「ピアサポートワーカー:理論と実践」(5. Peer Support Workers: Theory and Practice) https://imroc.org/wp-content/uploads/2013/06/5ImROC-Peer-Support-Workers-Theory-and-Practice.pdf(2021 .09..25確認 )

(p.8-9) ピアサポートのコア原則 (Box 3: The core principles of peer supportから)


「コアとなる原則」 ⑤ ストレングスに基づく (Strengths based)

ピアサポートには、サポートを提供する人が苦悩の中にいる人と一緒にいることを恐れない関係が含まれます。しかし、それはまた、その苦悩の中に可能性の種を見出し、その種が成長するための肥沃な土壌を作ることでもあります。それは、その人が自分の経験から何を得たのかを探求し、その人の資質や資産を探し出し、実は成し遂げてきたことを明確にし、小さな一歩を踏み出したように見えることをお祝いすることです。

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テーマに基づいた今日の対話

  • その人の強みを見つけられないと思ってしまう時があってそんな時に、一緒にいると自分が苦しくなる。ストレングスを見つけるというのを、頭ではわかっていても、そうじゃない視点になっちゃう時があって。意識しないとその人の強みから接するということがどうしてもできなくなったり。ああ…、自分ができてないと思って。こういうところ素敵だよね、って思える人とのやりとりはすごく自然にできるのに。

  • (今回参考にしている資料の)ピアサポートの原則の中に、「ストレングスに基づく」というのがあることがよくわからない。自助グループとか友達同士の関係や、やりとりでストレングスを意識することはないなぁと思って。自然に感じるものであって、意識するということは人生の中であまりないなと。むしろ、知らない人とかと接するときには、ストレングスを見つける努力をしないとうまくいかないところがあるのかな、と思って。ピアサポートとの関係は?? べてるでは「弱さを絆に」と言っていて、弱みのところでつながっている。 ストレングスについて、支援の現場では必要な要素だとは思うけれど、ピアサポートでは??(ハテナ)と思ってしまう。ピアサポートワーカーだから大事な項目ってことなのか? 普通に生きているぶんには苦手な人と付き合わなくていいじゃん、というのが普通の感覚だと思うけれど、苦手な人と向き合わざるを得ない関係にいるから「ストレングス」の考え方が必要なのかなと思って。

  • これはそうだよなぁと思って、これは(ピアサポートは)医療とは違うんだよなということを言いたいのではないかと思った。ここが欠けているとか、この疾患があるとか、そういう評価からはじまることじゃないんだよということが言いたいのかなと。

  • その人の中で見えること…。他の職員に「あの方、具合が悪いみたいだからいまは来てもらわない方がいいんじゃないか」と相談されたことがあって、でもそういう風に扱われちゃうんだというのもショックで。いつもだったらそういう人じゃないのもわかっているけども、でもその方から矢が放たれているように感じるとそうなることがあるなと。でも本人が伝えてくれたことは、いつもだったら言わずにいたことも言ってくれたんだなと思ったり。医療の中だと「具合悪いからね」で終わってしまうことがあるなと。ストレングスと関係あるかもなと思って。

  • 嫌い、と感じるのとは違うかもしれないけれど、上手くいかないこともある。利用者さんから誹謗中傷を受けたりすることもある。そこまでされると、自分たちのできることを超えていて、法的手段をとるかどうかみたいなことにもなってしまい、ピアサポートをこえている。ある程度の支援関係の中でやっているので、それを超えて暴力があるとかだと、法的なところに相談したり。そういうオプションがあるとわかったから、精神的に楽になった。どこまで引き受けたらいいのだろうというのがわからなかったから。いわれのないことを言われたときに、それを受けるものではない、ということを言えて、何でもかんでも引き受けるのが私の仕事ではないとわかったのは楽になった。でも嫌いにはならなかった。怖くはあったが、興味は抱いた。引き受けなくてもよいことがはっきりしたのはホッとした。私の場合は、ストレングスがあるから安心するのではなく、自分はここが怖かったんだなと気づくことで安心できた。〇〇〇なので〇〇〇しているのでは、ということは、言語化して言わないと、ほかの人はわからず、その人の課題として言い続けてしまうので。その人のいいところを見つけて言うのは、他の職種に言うためなのでは。自分と相手だけだったら、自分の中にあって、相手もその人自身が気づけばいいけれど、ほかの人と働くから言語化が必要なのだろう。

  • 苦手、関係作りがうまくいかない利用者さんはいる。自分の病気のことを何かのタイミングでカミングアウトしたら、「スタッフが病気だなんてあり得ない」と言われたり、「病気の人が働いているならここは利用できません」とか、誹謗中傷のメールを頻繁に送られたり。でも最後は仲良くなった。距離をとると少しずつ関係が良くなる人とかもいて。苦手だなと思ったら相手との距離感を調整して、関係が少しずつよくなっていくのを待つというようなことがあったなと思い出した。

  • ストレングスというのは見つけようと思って見つけられるのかなぁ…と思った。接する中で、この人にはこんな側面があって、そういうところ、いいな、とじわじわ湧いてくるモノかなとか。「一緒にいることを恐れない関係性」が大事なのかな。ちょっと踏ん張ればそこにいられるとかなら、その時間を持ってみるということなのかな。「ストレングスを見つける」というのが、その場しのぎな感じが少しする。

  • 自分がいつも「何か違うんだよな…」と思ったのは、無理やり、この人のこういうところがストレングスですよね、って見つけて話すというのがなんか無理やり感があって、先がない感じがあった。インスタントなメガネでも言うか。それだと、「ですね…。」って終わっちゃう感じがしてたけど、その人がこういう風に言ってくれたんだなって思えたら、その人に対する見方が変わる感じがする。新しい見方でその人を見ることができるようになる気がする。その先に発展性が生まれるかとか、本当にそう思えるか、とかが大事なような気がした。

  • ”インスタントなメガネ” の表現おもしろいですね。お互いにインスタントなメガネなことってあるんだろうなと思った。コンビニエンスに、自動販売機のように何かを求めてきている人もいる。そんな時にはそれで問題ないと思う。お互いに知らないことに気づいていく、そういうことの積み重ねでここでいうストレングスを見つけていくんだろうなと。でもお互いにコンビニエンスでない関係って限られている。コンビニエンスで解決できたらそれでもいいような気がする。全部を深めないといけない関係というわけでもないだろう。挨拶するだけでよい人間関係もあるし、教えてもらってありがとう、と気持ちよくなることもあるし。

  • 矢を放ってくれた人が、今思うと、自分にだから、こういう関係だったから言ってくれたんだろうなと、その時は思いつつ、納得はいってなかったけれど、そう言ってくれたのは今となっては嬉しい。相手に対する見方が変わっていくといいなと思った。今までの見方から新しい何かをみつけていくような関係でありたいと思った。

  • ピアサポートワーカーやピアサポートスタッフって、ピアサポートなんだからこうあるべきといういくつかの呪いがありそうな気がする。「ピアの人同士だからわかりあえるでしょ」とか。幻想ですよ!そんなことない(そういう時ばかりではない)、というのがもっと広く知られるとよいのではと思う。この10年くらい、ピアサポートスタッフというような人がいると良いことが起きる、として推し進められてきたと思うので、良い側面を知ってもらえるのは良いなと思うものの、そうじゃない側面も知っていく・共有していくことも大事なのではと思う。自分は周りにこうやって話ができる仲間が居るけれど、ピアサポートスタッフになって、辛い気持ちをひとり抱える人もいるだろうなと。ガス抜きができるとよい。支援職や看護師さん、医師も、患者さんに聞かれたら何か応えないといけないとか、こうしないと、というような呪いもあるだろうと思う。

  • ピアサポートは寄り添わなければならないという呪いが強い気がする。合わない人と頑張らないといけない、と義務のように感じる人は居そう。

  • ピアスタッフといっても、場によって感覚の濃淡がありそう。就労支援、相談支援、計画相談、アセスメント、モニタリングなど様々。

  • 当事者の文化でもだいぶ違う。身体障害領域では、アセスメントをすると言っていた。身体障害領域と精神の領域でも異なりそう。

  • 全ての場所でパワーや知識を同じにするということは無いと言うか難しいと思う。でも安心して良い形でそのパワーやスキルを使えるといい。自分たちにはこういうスキルがあるから、それを使ってくださいね、みたいなパワーを押し付けるのではなく。使う使わないはあなた次第。身体障害領域では、一人暮らしのノウハウなどを先輩という意識で伝えたりしていると思う。対等にハマるとしんどい。そもそも相談に乗っていること自体が対等じゃないなと思う。専門知識に基づいてアドバイスするほうがまだ楽だなと感じる時もある。「どうして元気になったんですか?」「自分も元気になりたいから教えてください」と言われることの方がしんどく感じる。個人的な経験を問われることが、相手にとっては自分の経験や知識がパワーなんだなと気づいた。自分の経験や知識に幻想を抱かれていると思って。そのパワーをいかにして鎮めるか、お互いに病気についてどう考えるといいのかな、ということを話すプロセス。「聞きたいです」と言われるならまだよいのだが「教えてください」と言われると。。。ピアスタッフでいるということ自体、そこの部分は何かパワーだったり権威だったりする。そこは十字架かも。みんなが進みたい先のモデルみたいになってしまっている。そこのパワーをどう消せるか…。

  • (自分の経験について話すときに)それが唯一の答えみたいになってしまうのは嫌なので「私の場合は…」と話すようにしている。

  • 複数ピアサポートスタッフがいれば良いのだろうけれど。。。

  • ピアスタッフは対等だというのがドンと来るとなかなか難しいし、全く対等はそもそもあり得ない。それよりは”出来る限り対等であるための模索”という感じかなぁ。


感想
  • ありがとうございました。対等の話になってしまい、ストレングスから逸れてごめんなさい。色々なお話が聞けてよかった。

  • 対等の話は凄い大事だなと思いつつも、たとえば「あの店いったことある」とか知っているー知らないとかで、知っていることの大きさの違いはその時その時に違う。ストレングスも対等じゃない感じの見方もある。自分が開かれていくための物の見方なのかな~とか思ったりもして、自分が深まった感じがした

  • ひらかれていく、というあたりにちょっとなんだろうと思った。こういう場があることで、助かる気がしている。貴重だなと思った。自分の中での問題解決、最近、セルフコンパッションという本の中に自分なりの答えを見つけた。生存本能。問題を見つけて、解決を見つけるのは、その人が生き延びたいからと書いてあった。今日の話でもいろんなことがすっきりしました。ありがとうございました。

  • 今日もありがとうございました。いろんな話ができて、学びが多かったと感謝しています。ストレングスも、いろんな見方をすることで、いろんな部分がわかったり、自分の気持ちとかいろんなことが深まっていくんだなと感じられた。対等については、考えると心が揺れ動くことがあるのだけれど、相手を一人の人間として大事にしていきたいし、私自身の気持ちも大事にして、お互いに人としての関係を大事にしていけたらよいのかなと思った。

  • 今年はじめてお会いする方も多くてお会いできてよかった。ストレングスについて、自分の見方が広がってよかった。価値観のことを価値観だけで自分で考えているとしんどいので、現場のこともまじえて話をする場は不可欠なのかなと。ImROCの資料を誰かが作っているのだろうが、その意図も知らないでその価値観に合ってるかどうかを考えて働くというのは難しいだろうなと思った。

  • 今日もおもしろかった。いろんな話題が入ってた。ストレングスというテーマではあったが、目の前の人との距離感、目の前の人とうまくやれないことがいっぱいあるということ、現場の話としてもっとしたい。対等ということも、ずっと悩んでいる。もっと話したいと思った。あくまでも話しのきっかけとして素材を持ってきているけれど、日本バージョンがあるといいなと思った。

  
この学習会を含め、2021年度のしっぷろの活動は、「草の根市民基金・ぐらん」様の助成により実現しています。草の根市民基金・ぐらんさんのWEBサイトはこちら → https://citizensfund-grand.org/