2022年12月14日水曜日

18日目:「禁じ手」の経験談

こんにちは!にしこです。

このところ、ピアスタッフの方が集まる場に参加させていただく機会が多くあります。そこで語られるさまざまな経験のお話にいつも感動します。ピアスタッフは「経験による専門家」で、その経験はきく人に、勇気や希望、生きていく力を与えるものだなあとつくづく実感しています。 


でもですね、最近私は、誰かとの対話においては、経験に基づく話でも「禁じ手」ともいうべき経験談があるのではないかと思っています。それは「分かり合えないことを前提とした経験談」です。

 

具体的には「あなたは経験していないからわからないだろうけれども」とか、「あなたは経験が浅いからまだわからないだろうけど」といった文脈で語られる経験談です。


例えばそれは、

「あなたは入院の経験がないからわからないだろうけど、私はね...

「あなたはこの病気の経験がないからわからないだろうけど、私はね...

「あなたは結婚していないからわからないだろうけど、私はね...」 

などなどでしょうか。


経験に基づく話も、「あなたは経験していないからわからない」という前提で話してしまうと、相手は黙るしかなくなってしまうわけです。そうなると、お互いの間に断絶が生まれてしまうし、そこにピアサポートや対話が入る余地は無くなってしまいますよね。

 


なぜこんな話をするかというと、最近、私自身が苦い失敗体験をしたからです。


それは大学院のゼミでのこと。就労支援のあり方みたいな話になって、議論が白熱した時に、私はつい、「企業に勤めた私の経験から言って...」と発言してしまいました。つまり、「福祉現場のあなた方は企業勤めの経験がないからわからないだろうけど」という文脈で相手の言説を封じ込めてしまったわけです。こうなると、相手は黙るしかないですよね。しまった!と思っても後の祭り。自分の発言を思い起こすと、とても苦々しく、そして恥ずかしい気持ちでいっぱいです。

 


こういうの「経験の権威化」とでも言ったらいいのでしょうか。経験談は、ややもすると暴力的にすらなるんだなあ、とつくづく思い知りました。とはいえ、失敗から学ぶことが大事です。今後の戒めにして、同じ轍(てつ)を踏まないようにしたいと思います。

 

ではまた!

 

つぶやきびと:にしこ