2020年12月15日火曜日

17日目:ロールモデル

日が落ちるのが早くなり、夜が長くなりましたね。職場を後にするとき、あたりは真っ暗です。クリスマスの由来をさかのぼると、冬至のお祭りにたどり着くらしく、この12月は長い夜を過ごさなければなりません。それなりに昼夜逆転していた時期は、17時頃に起きることも珍しくなく、12月になると太陽をまったく見ない日もあったなぁと思い出されます。

NHKが「ラジオ深夜便」という深夜番組を毎日放送しています。23時過ぎから翌朝5時まで。このラジオ深夜便は学生時代の昼夜逆転生活の欠かせない癒しでした。テレビのない学生時代でしたからラジオがお供だったのですね。オールナイトニッポンのようにテンションが高くなく落ち着いた大人(中年?)の雰囲気が心地よいものでした。ラジオ深夜便の放送終了を迎える朝5時になっても眠れないとき、自分のダメさを痛感しつつもダメさをスルーしつつ、思考のまとまらない頭で布団に入るのでした。

とあるピアスタッフから眠れないときに「ラジオ深夜便」を聞いていたよ、放送が終わっても眠れないことあるよね、そんな話題を聞いたときに、とても懐かしさを覚えましたし、そうそう!と言いたくなりました。ちなみに、わたしと同じ世代の人で、ラジオ深夜便の話題で盛り上がることは滅多にありません。そんな人はとても貴重です。病気で昼夜逆転していたとしたらなおさらレアです。

さて、ピアスタッフの話題をしてみましょう。日々の仕事の場面で、目の前にいる利用者の方から、相談に来てよかったと言われることがときどきありまして、わたしが当事者だからよかった、と話されることも稀ではありません。そのような場合、同じような経験をしている、共通の背景があることが実感されていると感じます。昼夜逆転生活のなかで「ラジオ深夜便」に出会ったというように。症状に近いところでは、わたしが疲れていても深夜に洗い物や掃除を始めてしまうとか、そういう話は、そうそう!とうなずかれることが多い印象を持っています。

わたしが現在フルタイムで働いているからでしょうか。わたしと同じ病名の人でフルタイムで働きたいと思っている人には、病気があっても働けるのだというイメージを抱けるらしく参考になるようです。この病気で休職したり失業した人であれば、再びフルタイムかそれに近い時間働けるだろうか、と一度は悩んだことがあると想像します。そんな時期に、働いている当事者と話をしたりして実感できることで、働くイメージを取り戻せることもあるかもしれません(人によるところが大きいと思われますが)。学問的にはロールモデルと呼ぶそうですね。わたし自身、障害者雇用で働く人たちや家庭生活をしている当事者にずいぶん勇気づけられたと思います。

わたしの場合や研修などで出会ったピアサポーターの話から実感していることですが、利用している人からみたピアスタッフのメリット?(効果?)は、ロールモデルの部分がとても大きいように感じます。病気や障害があっても○○できると知ることができた、とか、同じような症状や経験があって安心した、とか。当事者ならではの共感や寄り添いをあげていただく人もおられますが、どちらかといえばロールモデル的な効果を感じていることが多いようでした。

個人的には、専門職教育を受けた人たちとピアスタッフの視点の違い、ユーザー経験などさまざまなメリットもあると思いますが、利用者から見るとそれは実感しづらいだろうなぁとも考えたりします。反対にロールモデルはわかりやすく実感しやすいです。とはいえ、わかりやすいからという理由でピアスタッフの評価にもっぱらロールモデルばかり取り上げるとよくない気がします。ロールモデルは相手が感じるものなので、ピアスタッフ個人にはどうにもならないことだから。今風にいえばマッチングするしかありませんね。

ラジオ深夜便を聴いていた経験は、同時代を生きる人でしか共有しえないかもしれません。若い人であれば特定のYouTuberに勇気づけられたという経験が共感を呼ぶのかもしれません。働き方も多様ですので、わたしのようにフルタイムで働いている人の姿は、週2、3日での働き方をしたい人には縁遠いものに感じられるかもしれません。その逆もあるでしょう。

ロールモデルは時として強力ですが、意図できるものではなく、ロールモデルに焦点を当てられるとピアスタッフとして悩ましいなぁと思うことはしばしばあります。自分では努力しようがないことが評価指数になると困るだろうなぁという話でした。でも、自分ではどうしようもないことが人の参考になる面白さもあるんですよね。 なんてことを考えると眠れなくなるのでこの辺りで。

(つぶやき人:かや)